バナナペーパーからSDGs問題解決へ!サーフィンを愛する社長の理想の社会とは
今回インタビューした方は、丸吉日新堂印刷代表取締役の阿部社長です!
学生時代はサーフボードとスノーボードを持って世界各地を巡る。25歳で丸吉日新堂印刷の代表取締役となり、バナナペーパーをはじめとしたエコ名刺で各界の注目を集める。趣味はサーフィン、スノーボード、ランニング。大会にも参加する超スポーツマン社長。
阿部社長、本日はよろしくおねがいします。
よろしくおねがいします。
学生時代はどのように過ごしていましたか?
小学6年生の頃からサーフィンが好きで、世界中のいい波を求めては飛び回っていたのでお金が必要でした。そのためにいろんなアルバイトをしたのですが、お金を稼ぐことがすごく楽しくて、学生の時から将来自分で商売やろうと決めていました。
大学生の時から経営者になろうと考えていたんですね!当時は月にいくらぐらい稼いでいたんですか?
多いときには30,40万とか稼いでいましたね。例えば夜の除雪のバイトとか、人がやりたくない仕事もやっていました。「こういう仕事もあるんだな」と今まで知らなかったものにも気付けました。
そんなバイトがあるんですね!その時点で起業して何をやりたいかは考えていましたか?
世界中のいろんな場所に行けるような仕事をしたいと思っていました。勉強は苦手でしたが、サーフィンが大好きなので、世界中の地理だけは詳しく知っていたんです。
大学卒業後、すぐには起業されず、一度一般企業に就職されたそうですがその時はどのようなお考えでしたか?
もちろん自分で何か始めようと思っていたんですが、大学3年ぐらいになると、みんな就職活動をし始めていたので、一度就職がどんなものなのかを体験してみたいなと思い、やってみたんです。就職活動はとても面白かったです。
就活が面白かった!?どういうことですか?
当時の就職活動は企業訪問に行くと、その夜、担当者と飲みに行くこともありました。その会社の方の色々な悩みを聞いて、たくさんの方とお話して、実際はどんな会社なのかが垣間見れて、面白かったです。20,30社いったのですが、内定はほとんどもらえました。
でも就職活動は成功したのに、ブラック企業に入ってしまって、半年でその会社を辞めました。
阿部社長のコミュニケーション能力はすごいですね!昔から人とのコミュニケーションは得意だったんですか?
いえ、実は僕すごく苦手なんです。小さい頃から人前で喋ると緊張しちゃって、もう30秒も持たないぐらいでしたよ。(笑)でも本当は営業の仕事をしたかったので、ジレンマの中でやってましたね。
意外です!企業を辞めた後はどうされたんですか?
辞めた後は、大学の友達が長野で家具会社をしていたので、その支店を北海道に一緒に出そうという話になり、僕は長野に向かいました。
ちなみに、なんで大学時代の友達と家具のお店を始めようと考えたんですか?
長野の友達が僕と同じで、サーフィンをするためにインドネシアやハワイなど世界中回ってたいんですよ。
仕事でガッと稼いで、波がいいときにサーフィンができる会社があればいいねと、意気投合しました。
サーフィンが大好きなんですね! そこから家具会社を始めたんですか?
実は始めなかったんです。新卒で入った企業を辞めるのは親にも内緒だったので、一応親にも報告しておこうと思い、連絡すると「1回戻ってこい」と言われたので、北海道の実家に帰りました。
すると印刷会社を経営していた父から、「印刷会社の仕事ではいろんな人と出会えてたのしいぞ。やってみないか?」と言われました。父からそんな風に言われるのは初めてだったので、1ヶ月だけやってみようと思い、22歳の時にこの仕事がスタートしました。
そうだったんですね!印刷会社の仕事を始めて、のちに「バナナペーパー名刺」を作られたと思いますがこちらについて教えてください。
今でこそ、世の中的にSDGsという言葉が普及して、注目されていますが、阿部社長はこの言葉が出てくるよりもずっと早くからこの事業を始められていると思います。そこにはどんな思いがありましたか?
はじめは父と2人で仕事をやっていたんですが、パンフレットとか伝票とかがメインで、名刺はやりたくない仕事だったんです。これはどの印刷会社も同じでした。なぜなら名刺は単価が安いし手間がかかりますからね。
うちも商品の9割型が伝票だったんですが、デジタル化のせいで、手書きの伝票がほとんどなくなり、廃業する同業者が多くなりました。
同業者はやりたがらないけど、名刺はお客さんにとって大事な商品であることに変わりなかったので、みんながやりたがらないことを進んでやってみようと決断したんです。
デジタル化が進んでいますが、名刺は今もほとんどの方が持っていますもんね!
そうですね。ある日、某大手飲料メーカーさんから、その会社が販売して回収したペットボトルが大量にあるので、それを再利用して名刺にしてほしいというお話をもらいました。大手会社なのに、他の印刷会社では全部断られてしまったのでうちに来たそうです。
断れば取引が終わってしまうので、「なんとかしなきゃ!」と思い、調べてみると、卵のケースやペットボトルをリサイクルした製品を取り扱っている滋賀県の会社を見つけたんです。
電話かけたら、偶然工場長が出て、ペットボトルから名刺を作りたいという話をすると、試作品を作っていただけることになりました。
試作品を作るための印刷の機械がなかったので、また色々探して、最終的に半年かかってやっとペットボトルを再利用した名刺が完成しました。
飲料メーカーさんに持っていくと、オッケーをいただき、そのときからペットボトル再生材の名刺がスタートしたんです。
当時は、100%リサイクルの名刺が世の中になかったので、飲料メーカーの社員さんが名刺交換をする時に、名刺を見た取引先様から、「おたくの会社、やっぱり素晴らしいですね」と、とても褒められたそうです。
社員の方々は「実はうちの会社、こんな環境の方針でやってます」といった話もできたようで、営業にもとても役立ったそうです。
ペットボトル再生材名刺の影響力、とてもいいですね!
そうですね。ISO 14001⋆1ができて、徐々に環境ブームが到来したのですが、実際、ほとんどの人の意識は追いついていませんでした。僕自身も環境への意識は全然なくて、昔は喫煙者だったんですが、タバコのポイ捨てなんかもしてた有り様でした。
ただサーフィンが大好きですし、釣りや他のアウトドアも好きだったので、環境がどんどん悪くなってることは肌で感じていました。
そこで、せっかく環境にやさしい名刺をつくるんだったら、名刺を使うだけにとどめず、実際に何かに貢献できる仕組みを作ろうと思い立ち、「1枚につき1円寄付付きの名刺」を作りました。これが「エコ名刺」のきっかけなんです。
*1 ISO14001は、環境マネジメントに対する国際的な認証です。ISO14001のもと、組織や企業は、継続的に環境への負荷を低減させる仕組みを構築する必要があります。
そのときから、さらにエコ名刺商品を広めていったのですね。
そうなんです。でもある時、世界的な原油価格の高騰が原因で、中国がペットボトル素材を高く買い取るようになりました。当時は日本からペットボトル材料がなくなって、ペットボトル回収業者も潰れてしまうような状況でした。
そこで紙を作ることができる他の材料を探す必要があると考え始めていたんです。
再生紙偽造問題って知っていますか?
分からないです!
15年ほど前ですが、大手製紙メーカーが生産していた再生紙100%使用の表記は全部嘘で、本当は0%だっという再生紙偽装問題が起きたんです。しかし、大きく報道されることはなく、新聞に一日だけ載って、ぱっと消されました。
この問題を聞いた時は、衝撃を受けました。再生紙マークがついてるから信頼して、仕入れた封筒や名刺を、お客さんに販売していたので、僕たちも責任感じましたね。
再生紙の表記が嘘だったということですよね。
そうです。食べ物だと口に入るから、味ですぐに違うってわかるんですね。
でも紙ってわかんないじゃないですか、ばれないからと言って悪いことしてたくさん利益を求めているというのはだめですよね。
いろんな製紙メーカーが再生紙に関して嘘をついてるなら、もう自分たちが作るしかないと思い、色々探していた時に、ある講演会で、バナナの茎が紙になるという話を聞いたんです。
バナナを生産する多くの国は貧困国ですが、世界中で栽培されています。その貧困国で廃棄されているバナナの茎を回収すれば、世界中の木を1本も切らなくて済む量の材料になるというのです。さらに、茎を回収する現地で、新たな雇用の機会も生むことができるということを聞いて、これはもう絶対やりたいと思って、すぐにその講師の先生に、どこで作っているのかなど、色々教えていただきました。そうはいっても、僕は札幌のちっちゃい印刷会社なので、すぐに提携してもらえるようなルートはありませんでした。
ではどうやって作り上げたんですか?
たまたま、うちの通販で名刺を注文したスウェーデン人環境コンサルタントペオ・エクベリさんの発送前の名刺が置いてあったんです。その名刺の裏面を見ると、本も出版されていて、この人もしかしたら!と思って、すぐメールを送りました。
すると一度会うことになり、お話すると、バナナペーパーをぜひ作ろうと、意気投合しました。さらにペオ・エクベリさんは、アフリカのザンビアで学校を作っていたんです。ザンビアの人々に仕事を提供しようということで、バナナペーパー名刺づくりのきっかけとなりました。
ペオ・エクべリさんとの写真
ザンビアのバナナペーパーチーム
そうだったんですね。社長は人との出会いに対して積極的ですし、いい方法がないなら自らやってみたりという行動力がすごいですね。その源となっているのは何ですか?
僕は他にもキャンピングカーレンタルのベンチャーの会社、サウナ好きのコテージなども経営しているのですが、興味あることになるとなんでも頑張れちゃうんですよね。逆に興味ないことは全くやる気がでないんですけど(笑)
理由などではなく、興味があるからですか?
そうですね。最近では成功した社長が本出して、使命感でかっこいいこと書いてますけど、だいたいの中小企業の社長は最初からそんないいことを考えていないんじゃないかな。後に、社会的なことを考えれるように変わっていっているんだと思います。
ザンビア訪問
見かけや表面じゃなくて、実質がちゃんとそこにあるという感じがしますね。
では、阿部社長にとって、自分の得意なことっていうのは、具体的にどういったものですか?
僕はね、人と人を繋ぐっていうことが得意なんです。人や地域を繋げる事も得意です。
印刷会社の仕事を始めたころは、1日100件ぐらい飛び込み営業してたんですけども、それが苦痛でしたね。
人と出会いたいんだけど、飛び込み営業のような、自分から出会いに行くことがすごく苦手だったんです。なので、自分の使う名刺にちょっと工夫し、相手から質問がくるというやり方で、コミュニケーションがとれて仲良くなるようになったんです。
僕は相手から仕事の注文が勝手に来るというような、自分が苦手な状態じゃなくて、得意な状態に持っていきたいなと思うんです。
営業のやり方が実は嫌いなので、これまで営業を自分からしたことは、仕事を始めたとき以来、1回もないんですよね。
お客さんの方から来てくれるような状況を自分で作るってことですか?
そうです。お客さんのことをお客さんとして扱うことがあまりないんですよ。
昔は偉い人に対して、媚び売って頭下げて、仕事をもらうために、自分じゃない自分を演じていました。でもなにか違うと思って、人として対等に付き合えるような人と楽しく仕事できたらいいなと思い、今では親友みたいな関係を作っていますね。
親友に対しては、必要ないものは一切売る必要ないですし、いいもんだったら高くてもおすすめすると思います。
だから今考えてみると、僕のお客さんって、全員友達みたいなんですよね。
会社の行事のひとつですが、エコ名刺ユーザー交流会を開催したり、釣りの会やマラソン部を作ったりしています。
エコ名刺ユーザー会
マラソン部
交流する場ですか?
そうです。Facebookとかで集めると、50人とか100人とか来るんですよね
その人たちと楽しく食べたり飲んだり、交流しながら、知らないうちに友達になって、知らないうちに、繋がってるっていう感じです。
そう考えると、毎日が遊びなのか、仕事なのかよくわからないっていうか。(笑)
すごいですね。本当にお客さんというより友達に近いですね!
そうなんです。
先に人間関係、信頼関係を作ってしまえば、どんな依頼でも友達になっちゃうので、後はよろしくというように任せられます。
パタゴニアというアウトドアメーカーは僕の理想とする会社です。
社員をサーフィンに行かせようっていう本を出しているのですが、その本を読んで、僕の会社もこんな風にしようと思いました。例えば、僕のようにサーフィンが好きな人って、もしその日の波が良かったら、昼間サーフィン行きたいんです。
働くために生きてるわけじゃなくて、楽しむために生きてるのに、社会に出ると就業時間があります。
社長が思う理想の会社ってどんな会社ですか?
でも、時間を決めず、波がいい日は3,4時間サーフィンやって帰ってきて、その分3,4時間残業して、また仕事すればそれでいい話だと思うんです。
パタゴニアは、週休3日なんですが、平日だろがいつだろうが自由に、自分達の好きなライフスタイルを尊重しながら、高収益を得ているんです。
波がいい時、山が好きな人が、サーフィン好きな人に、僕たちが全部やってあげるからサーフィン行っといでと言って、そして反対に、山のいいシーズンはサーフィンが好きな人が、僕たちが全部やるから、行っといでという感じなんです。
たしかに働くために生きてるわけじゃないですよね。
そうなんですよ。日本ではまだ少ないけど、働いてる人自身が理想とする働き方とかできるような会社にしたいなって思ってますね。
なるほど!
国際的なものや環境に関心がすごくあるっておっしゃってたと思うんですけど、今後の展望について教えてください。
まず、バナナペーパーに関しては、値段も高いので最初は認知されにくかったんです。ですが、作り始めてもう十数年経ちますが、ここ2,3年でSDGsが普及してからは一気に盛り上がってきました。いまでは、海外から繊維を輸入して、逆にその製紙工場に販売する仕事とかもしてるんです。
特に、北海道は観光で、すごい数の外国の方がやって来ています。僕はそこにシフトして、より海外の人に日本の素晴らしさを知ってもらって、また来てもらうような仕事を進めています。
バナナペーパーもアフリカで繊維を作ってますけど、日本の技術がミックスされています。この技術が加わって初めて、バナナペーパーとして評価されていますし、そういう日本の素晴らしさを発信したいです。
また、僕の目標は今の日本の会社や僕の周りだけじゃなく、世界をみんな友達にしちゃうということですね。
SDGsの究極は、世界中の人が友達になれば、人のうちに行ってゴミを捨てる人もいないし、戦争も環境破壊も起きないんだと思うんですね。
そういった社会を作るために、まずは自分たちからそういうコミュニティを作っていこうという感じです。
アメリカツアー
なるほど、まだまだSDGsにはいっぱいいろんな課題がありますけど、まずコミュニティが必要ということですね。
そうですね。ただの数値目標とかやってても、多分疲れちゃうと思うんですよね
それよりも楽しく仲間を広げながら、実際にそこに参画してるという意識が広がっていくことが大事です。
実はエコ名刺で環境の負担を減らせる分は本当にわずかですが、その名刺のおかげで、例えば今回のインタビューでの出会いのように貞廣さんが環境についてちょっと興味を持ち、ゴミを拾うとか、連鎖していきます。そのきっかけを作るのが僕の役目です。
楽しく仲間を作って、意識を広げていくことが解決に繋がるんですね!
そうです。楽しくなきゃダメですね。仕事もそうですけども楽しくないと続かないので。やっぱり自分の得意なことで仕事ができるような社会を作るのも、結果的に自分も周りも良くなるし、連鎖して、SDGsに繋がっていくんじゃないかなって思いますね。
これから就職されるんですよね?
そうなんです。今大学2年生で3年生になったら、就活が始まりますが、私自身やりたいものがはっきりなくて、すごく漠然とした不安があります。
いろんな大学生とかに聞くと、みんなそうなんですよね
僕らの時っていわばバブルの時代で、頑張れば欲しいものが手に入るとか、どんどん良くなるっていうが見える時代だったし、昔は日本のGDPは世界で第2位とか、3位だったのに、今はもう30位近くまで落ちてます。
国力が下がってるのは、目標とか夢とかを目指す人がいないんだと思うんですよね。若者が見てる大人がみんな疲れているのが現状ですよね。
そうですね。
でも、それは見ている場所や聞く人を変えないとダメなんです。
僕も高校生の時に、ハワイと日本で2年間ずつ大学に行こうと思って資料を取り寄せて、学校の先生とか相談したんです。
ですが、みんな反対して、「海外から戻ってきても仕事もないし、海外は危険だぞ」とか言うんです。
でも、それは先生が行ったことなくて知らないだけで、行ったことある人に聞いたら、「めちゃめちゃいいぞ」って言われただろうし、もしその時行っていたら、今もっといろんなことができているかもしれないと思うんですよね。だから、相談する人を間違えちゃいけないんですよ。
僕もいくつか学校に訪問して、いろんな話をするんですけども、世の中の8割のおじさんたちは現実を知っているからもうダメですと伝えてます。(笑)
現実というのは、理想としない生き方のことで、生活のために仕事してる人が多いです。
でも2割の人は自分のやりたいことやっていて、その人達が実は社会の8割を動かしてるんじゃないかなと思いますね。
50歳ぐらいになってそう言われても、もう変えようがないですが、学生さんはどっちに行きたいかを今から決めれるんです。
だから、学生の時、やるべきことがわかんなかったら、いろんな人に会う、今回のインタビュー活動もすごくいいと思います。
あとは日本以外のとこに行ってみるっていうのも大事です。日本が、いかに情報操作されてるかというのがわかります。(笑)こういった経験はきっと役立つと思います!
今日はありがとうございました!!
従来の印刷という常識にとらわれず、紙ベースのアナログとデジタルの融合により、お客様のメリットを最優先した印刷・販促のご提案をさせていただき、パートナーとして真剣にお付き合いできる関係を目指します。
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